配偶者が突然亡くなってしまった。その後、姑といった配偶者の家族と一緒に暮らしていたものの、ソリが合わなくなってしまった。

こんなとき、配偶者の家族と縁を切る方法があります。

姻族関係終了届」です。

姻族関係終了届とは、夫婦の一方が死亡した場合において、生存配偶者が姻族関係を終了させるために役所に提出する届のことです。

これにより、配偶者の家族に対する扶養義務を負うこともなくなります

扶養義務とは、自分の力だけで生活することが難しい親族がいるとき、経済的な援助を行わなければならない義務のことです。

ここでいう扶養義務の内容とは、扶養義務者自身が生活していくことができることを前提として、その余力のある範囲のなかで、被扶養者を扶養すれば足ります(生活扶助義務)。

残された配偶者は夫(または妻)の両親の扶養義務を直ちに負うわけではありません。

しかし、特別の事情がある場合には、家庭裁判所の審判により、被扶養者と3親等内の親族に対しても、扶養の義務が課されることがあります(民法877条2項)。

ですので、扶養義務を負う可能性は残ります。

姻族関係終了届を出すことにより、扶養義務を負う可能性がなくなるとともに、亡くなった配偶者の先祖の墓の管理義務(祭祀承継の義務)も消滅します(民法751条2項、769条、897条1項)。

また、届を出すことで、死亡配偶者の相続権や遺族年金の受給資格が失われることもありません。

姻族関係の終了は、一方的な意思表示によってできるため、役所に戸籍謄本、印鑑、身分証明書を持参し、死亡した配偶者の氏名、本籍、死亡年月日などを届出書に書いて提出すれば手続きは完了です。

ちなみに、亡くなった配偶者の親族が、存命の配偶者に対して姻族関係を終了させることはできません。

届を出すデメリットとして、一旦終了させた姻族関係を復活させることはできません。

また、当然ですが、亡くなった配偶者の親族との関係は非常に悪くなること予想されます。

もっとも、戸籍に姻族関係が終了したことが記載されるだけであって、亡くなった配偶者の親族に通知が来るわけではないので、親族に知られずに姻族関係を終了させることができます。

なお、存命の配偶者が再婚しても姻族関係は当然には終了しませんから、再婚してから前に結婚した相手の親族との関係を整理したい場合にも使える手段です。

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輿石逸貴 弁護士(静岡県弁護士会)


令和3年1月にひのもと法律事務所を設立。静岡県東・中部を中心に、不動産、建築、交通事故、離婚、相続、債務整理、刑事事件等、幅広い分野に対応する。 憲法学会に所属し、在野での憲法研究家としての一面も持つ。