会社を辞めたいと申し出たにもかかわらず、会社が退職させてくれないというケースを「在職強要」と言います。このような場合、どうすればよいのでしょうか。

日本では憲法上職業選択の自由が認められていますし、強制労働は許されません。
ですから、辞職することは、原則として労働者の自由ですから、使用者の承諾は不要です(憲法18条)。

期間の定めのない労働契約の場合であれば、法律上、辞める意思表示をしてから2週間が経過すれば、退職することができます(民法627条)。
(旧民法では、627条2項で、月給制の場合には月の前半に翌月についての解約の申入れをしなければならないという規定がありましたが、民法令和2年4月施行の改正民法からは、そのような規定はなくなりました。)
会社の就業規則で、2週間より前(例えば、1か月前まで)に辞める意思表示をしなければいけないという規定があっても、そのような規定は無効となります。
このとき、具体的に退職の理由を述べる必要もありません。
なお、退職の意思表示は、雇用主にその意思表示が伝われば、以降は撤回できません。

期間の定めがある労働契約の場合でも、「やむを得ない事情」があれば、期間の途中でも退職することができます(民法628条)。具体的には、労働者に病気や障害が発生したときや両親の介護が必要になったとき、パワハラ等違法な行為があった場合などです。
また、契約を結んだときに示された労働条件と、実際の労働環境とが異なる場合には、すぐに退職することができます(労働基準法15条2項)。

辞め方としては、口頭で「辞めます」と伝えたり、退職届を提出したりいずれの方法も有効ですが、退職の手続が雇用契約書や就業規則で定まっている場合は、それに沿って退職の手続をしましょう。
証拠を残すのであれば、退職届の写しを保管しておいたり、退職の意思を示したメールやメッセージアプリ等を保存しておくことが考えられます。
退職の意思を示したとき、使用者から「代わりの人を探してきたら退職を許す」と言われたとしても、従う必要はありません。使用者側の事情であり、退職する者に代わりの人を探さなければいけない義務はないからです。

退職届を受け取ってくれない場合

退職届を受け取ってもらえない場合は、どうしたらよいでしょうか。その場合、配達証明付きの内容証明郵便を使用者に送付しましょう。
内容証明郵便の書式ですが、横書きであれば20文字×26行が一般的です。
内容証明には、表題、通知内容、日付、自分の住所・氏名、送り先が法人である場合は事務所住所・社名と代表取締役の氏名を記載します。

また、「辞めるときはその者は罰金を支払う」といった就業規則があったとしても、その内容は違法ですから従う必要はありません。

社長が、「辞めるというのであれば解雇扱いにする」と言ってきた場合はどうでしょうか。
この場合、社長は権利の濫用であるとしてそのような解雇は無効となります(労働契約法15条)。

労働関係のトラブルが生じた場合は、弁護士か、あるいは、お近くの労働基準監督署に
ご相談されることをお勧めいたします。

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ひのもと法律事務所
輿石逸貴 弁護士(静岡県弁護士会)


令和3年1月にひのもと法律事務所を設立。静岡県東・中部を中心に、交通事故、離婚、相続、債務整理、刑事事件等、幅広い分野に対応する。 憲法学会、比較憲法学会に所属し、在野での憲法研究家としての一面も持つ。