一般的な借家契約では、一旦建物を賃貸すると、賃貸人は「正当事由」がなければ解約したり賃借人からの契約更新を拒んだりすることができません。

そのため、貸主は、一旦建物を貸せばいつ借主が出ていくかわからないという不利益があります。

しかし、平成12年に施工された改正借地借家法で、定期借家制度が導入されました。

定期借家契約を結べば、契約は更新されることなく、期間満了によって契約が終了します。

この制度を活用することにより、不動産をより貸しやすくなると言えます。

定期借家契約の要件

定期借家契約は、普通借家契約に比べ、厳格な要件を満たす必要があります。

定期借家契約の要件には、以下の5つが挙げられます。

① 「建物」の賃貸借であること

② 契約書に「契約の更新がないこととする旨」の定めが存在すること

③ 期間の定めがあること

④ 公正証書等の書面によって契約をすること

⑤ 建物の賃貸人は、あらかじめ、建物の賃借人に対し、建物の賃貸借は「契約の更新がなく、期間の満了により当該建物の賃貸借は終了」することについて、その旨を記載した書面を交付して説明すること

④については、必ずしも公正証書による必要はなく、いかなる形式・体裁のものを問わず、書面によれば足りるとされています。

書面には、更新がないこととする定め、当事者、対象物件、賃料額、確定した始期・終期の記載が必要です。

⑤については、契約書(④)と事前説明文書(⑤)は、別個の文書である必要があります(最判平成24年9月13日)。

事前説明文書への記載は、具体的には、契約の更新がなく、期間の満了により賃貸借契約が終了する旨の記載、日付、賃貸人の氏名、代理人を選任する場合にはその代理人の氏名、定期借家契約の骨子(賃借人、期間、対象物件、賃料)が必要です。

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ひのもと法律事務所
輿石逸貴 弁護士(静岡県弁護士会)


令和3年1月にひのもと法律事務所を設立。静岡県東・中部を中心に、不動産、建築、交通事故、離婚、相続、債務整理、刑事事件等、幅広い分野に対応する。 憲法学会に所属し、在野での憲法研究家としての一面も持つ。