司法試験の勉強において、一般的にやってはいけないとされていることが色々あります。

その中で、多数的見解と思われ、かつ、筆者が受験生時代に実感したものを3点あげていきたいと思います。

① 学説をいくつも覚える

 司法試験においては、知識については1つの論点につき、判例の見解を1個、判例がない場合は通説を1個覚えておけば十分です。

 試験時間は短いので、答案に学説をいくつも書いてる時間はありませんし、学説をいくつも書いたからといって点が入るわけではありません。

むしろ、余計な学説を書くことで、それがもし不正確な記述であれば、減点のリスクすらあります。 

 また、たとえば1つの論点につき学説を3つ覚えようとすると、他人より勉強量が3倍に増えることになり、むしろ圧倒的に不利になります。

 ですから、1つの論点について学説をいくつも覚えることは不要であるばかりか、かえって合格から遠のく可能性があります。

② 基本書を通読

 ひたすら基本書を通読することは、試験においてあまり意味がないとされる勉強法の典型ですが、大学やロースクールの先生がよく勧めてくるので、ついついやってしまう勉強法でもあります。

 筆者の実感では、はっきり言って、全く意味がありません

 まず分厚い基本書を全部通読すること自体が困難なわけですが、読んだとしても読み終えた頃にはほとんど忘れているので、頭には何も残りません。

 それより大事なのは、問題演習です。

 また、わざわざ学者先生の本を使わなくても、予備校本をテキストにすることで十分です。

 予備校本のリスクとして、記述が不正確である可能性がありますが、研究者が書いている本より圧倒的にわかりやすいことが多く、自分に合う方を選べばよいと思います。

 また、分からないところを調べる場合には、実務的に定評のあるコンメンタール等で調べた方がよいでしょう(たとえば、刑事訴訟法であれば『条解刑事訴訟法』など)。

 ただし、学者先生が書いた本でも、以下はお薦めです。

 なお、以下は筆者が受験生時代に実際に使用していたものであり、現在では古いかもしれません。

 小山剛、土屋武、畑尻剛編『判例から考える憲法』(法学書院、平成26年)

  司法試験を意識した本で、すばらしい。解説を読まなくても、論点整理のところを読むだけでも効果があり、初学者だけでなく試験直前の方にも即効性があります。憲法については、下手な問題集を解くより、本書を読むのを優先したほうが良いとまで思える1冊です。

 水町勇一郎『労働法(第6版)』(有斐閣、平成28年)

  司法試験を意識した基本書。判例についての記述は、そのまま試験で使える論証として用いることができる。簡単な問題がついており、基本的な問題を解く能力も身につけることが出来ます。

 田中豊『民事訴訟の基本原理と要件事実』(民事法研究会、平成23年)

  超一流の実務家によって書かれた本で、民事訴訟法と要件事実が同時に学べます。ただし、難しい本です。必須ではなく、民事訴訟法が苦手な方の副読本として用いることをお勧めいたします。

③ ゼミを組まない

 基本的に、この試験では孤独に黙々と勉強する方は受かりません。
 
 独りで本を読んでいても試験的にはあまり意味がありません。

 問題を解くには多大なエネルギーを要しますから、他人と一緒にゼミを組むことによって、他人と一緒にいることで強制的に問題を解かなければいけない環境を作り出すことが必要です。

たまに、独りで過去問の答案構成だけ繰り返して受かる方がいるようですが、特異な例外と考えるべきでしょう。

 そう考えると、他人と一緒になってゼミを組むだけの最低限のコミュ力も要求されます。

 ゼミの方式についてですが、あくまで一例ですが、まず2時間計って過去問を解き、次に出題趣旨・採点実感、更には模範解答・上位答案等を音読して脳に叩き込む。

音読している最中に気づいた点、疑問点があれば友達と話し合う。

 予備校や大学教授が書いた解説の類は、分からないところだけ読めば十分です。

 そして、最後に答案を交換し合って、読んでもらい、互いにコメントする。

 これで十分ですが、ここまでやると半日は潰れ、クタクタになると思います。

 夕方以降は疲労困憊だと思いますから、インプット中心に好きな勉強をすれば良いでしょう。

 あとは、なるべくこれを毎日繰り返す。3日に1回くらいのペースだと、演習が少な過ぎて過去問を全問回すことができないと思います。

 いずれにしても、ゼミを組むということは、司法試験においては必須だと思います。

まとめ

ここであげた注意点については、もちろん例外的な方もいます。

基本書を通読するだけで合格するという方もいらっしゃるようです。

ですが、ここであげた注意点については、旧試験時代から良くない勉強法とされているものなので、迷ったら避けた方がよいと思います。

受験生はまずは法律家になるための勉強をしなければいけません。

しかし、一人の「法律家」としての最高の勉強法は 少しでも早く実務家になり、実際に仕事をすることです。

皆様が少しでも早く実務の世界に出て、ご活躍されることを祈っております。

ひのもと法律事務所
輿石逸貴 弁護士(静岡県弁護士会)


令和3年1月にひのもと法律事務所を設立。静岡県東・中部を中心に、不動産、建築、交通事故、離婚、相続、債務整理、刑事事件等、幅広い分野に対応する。 憲法学会に所属し、在野での憲法研究家としての一面も持つ。