【注目】離婚で弁護士に依頼するメリット|裁判の費用や調停の進め方
離婚するかどうかは、基本的には、夫婦で決めるものです。
離婚する際に、夫婦にとっては他人である弁護士に依頼するメリットはなんでしょうか。
協議離婚とは
夫婦の一方当事者が離婚を望む場合には、まずは夫婦で話し合って協議します。
その上で、お互いが離婚することで納得した場合は、離婚届に署名捺印し、役所に届け出ることで離婚が成立します。
これを、協議離婚といいます。
調停離婚とは
離婚の協議が難航した場合、協議の段階で一方当事者が弁護士に自身の代理人となるよう依頼し、代理人を通して相手方と交渉する場合もあります。
ですが、当事務所では、話し合いがこじれた場合には速やかに家庭裁判所に調停を申し立てることをお勧めしています。
離婚調停は、相手が富士市・富士宮市に在住している場合は、静岡家庭裁判所富士支部(静岡地方裁判所富士支部・富士簡易裁判所と同じ建物)に申立書を提出することにより申し立てます。
(申し立てる側が富士市・富士宮市に住んでいても、相手が富士市・富士宮市に住んでいない場合には、静岡家庭裁判所富士支部に申し立てることはできませんので、注意してください。)
申立書の用紙は、裁判所に行けばもらえます。
離婚調停は、中立的な立場である調停委員(2名)が当事者の間に入り、お互いの顔を合わせずに話し合いをし、解決の道を探ります。
もちろん、待合室も別々となります。
DVがある場合など当事者の身の安全に危険があったり、一方当事者が遠方で別居している場合などは、一方当事者が裁判所にわざわざ来なくとも、電話で調停に参加する手段もあります(電話会議、注)。
また、申し立てるだけであれば、費用も少額ですみます。
離婚調停は、離婚の話し合いをするには最適の場なのです。
離婚調停は、弁護士に頼まなくとも、当事者だけで話し合いができることを想定している制度です。
前述のとおり、費用も少額ですみます。
それでは、調停の際に弁護士に頼む必要はないのでしょうか?
メリット1 弁護士に頼むと話し合いが速くなる
結論から言えば、弁護士に頼まなくとも調停をすることはできます。ただ、もし依頼することができるのであれば、できるだけ早い段階で頼んだ方がよいと思います。
離婚調停では、離婚をするかしないかという話だけではなく、離婚したとしても、財産分与をどうするか、養育費をどうするかという財産、お金の話が中心になることが多いです。
そうすると、財産の情報を整理して適切に手続を遂行することについては、弁護士は慣れていますから、本人同士の話し合いよりも迅速に手続が進行する場合が多いのです。
つまり、弁護士に頼むメリットの1点目は、手続が速く進むということです。
離婚調停はどのくらいかかるのか、というご相談を受ける場合があります。
しかし、話し合い次第なので、一概に述べることはできません。
すぐ終わる場合もあれば、1年以上かかる場合もあります。
一般論としては、数か月はかかると思った方がよいかもしれません。
調停は長期にわたる可能性が高い上に、どれくらいかかるか予測を立てづらいため、ただでさえ精神的ダメージを負っている当事者からすれば、調停を迅速に進めていくのが重要になるのです。
メリット2 弁護士に頼むとアドバイスがもらえる
今日では、どなたでもわからないことをインターネットで自分で調べることができる時代になりました。
離婚についても、インターネットで検索することによって多くの知識を得ることができます。
ですが、弁護士は実際に事件処理にあたって経験して得た知識を持っているので、事件やそのときの状況に即したアドバイスを受けることができます。
特に、離婚調停の場合には、当事者それぞれが交互に裁判所の一室で話をすることになりますが、一方が話している間は、他方当事者は待合室で待っていなければなりません。
長いときは1時間以上待たされることも珍しくはありません。
1人で待合室で長時間待ち続けるのは不安だと思います。
今自分がしていること、主張していることは間違っていないのか、自分一人で判断するのはなかなか難しいことだと思います。
調停段階で弁護士に依頼すれば、待合室で待っている間に、プロに疑問点を質問し、色々アドバイスを受けながら、調停での方針を確認するということが可能になります。
さらに、もし離婚訴訟になったとき、最終的に離婚が認められるかどうかは、民法770条1項所定の離婚原因がなければ、離婚は認められません。
一方当事者の気持ちが離れれば結婚生活を続けることは難しそうですが、裁判所は離婚を認める場合を意外と厳しく判断しています。
価値観の不一致や口争いがあるといった程度では、基本的には離婚は認められません。
弁護士は、調停段階から、その事案において訴訟になったときに最終的に離婚が認められそうかどうかを念頭に置きつつ、財産分与や養育費を含めた相手への主張を考えます。
離婚が認められなさそうなのに、あまりに強気な主張ばかりするのは考えなくてはいけません。
弁護士に依頼すれば、そのようなことを計算した上でアドバイスをしてくれます。
メリット3 弁護士に頼むと相手と連絡をとってくれる
弁護士に依頼すると、代理人として相手方と連絡をとってくれるので、直接顔を合わせなくていいのはもちろん、電話やLINEのやりとりで不快な思いをすることはなくなります。
離婚トラブルの場合は、当事者が精神的にダメージを負っているケースが少なくありません。
そのような状況でとても話し合いどころではないという方も多いと思います。
また、一方当事者が別居する際に、荷物をそのまま置いていくケースも多く、代理人が荷物のやりとりをしたり、引っ越しの立会いをする場合もあります。
相手方との直接の連絡が必要なくなることは、場合によっては、最もメリットがあることかもしれません。
話し合いの途中から弁護士に頼むことはできる?
離婚協議中はもちろん、調停の途中で当事者だけで話し合うのは諦め、弁護士に依頼することはできます。
注意すべきなのは、なるべく早い段階で弁護士に依頼した方がいいということです。
離婚に限らず調停や訴訟では、当事者だけではどうしようもできなくなってから法律事務所に相談するケースがありますが、初めから依頼していればここまで混乱することはなかったのにと思われるケースがよくあります。
また、早期の段階から受任している方が、弁護士としてはそのケースを理解しやすいという面もあります。
弁護士に頼めばこちらの希望どおりになるか?
弁護士は依頼者の代理人ですので、最大限依頼者の希望に沿った主張をします。
しかしながら、弁護士とはいえ、無理な主張までとおせるわけではありません。
代理人であっても、依頼者の意思のままに行動するのが適切でない場合には、そのまま主張するというわけにはいきません。
弁護士は、自身の知見に基づいて両者が納得できそうな紛争の落としどころを見つけ、落としどころを考慮しながら依頼者の利益を実現しようとします。
これは、結果的には、早く紛争が解決し、依頼者の利益にとってもよい結果である場合が多いのです。
ただし、調停は裁判とは異なりますので、話し合いの中で相手方が納得しさえすれば、法的に実現困難であったり、意味のない要求であっても、柔軟に実現できるのが強みです。
ちゃんと相手の弁護士と交渉してくれるのか?
弁護士に依頼しても、相手にも弁護士がついている場合、ちゃんと交渉してくれるのかと不安になる方もいらっしゃるかと思います。
特に、当事務所のような地方の弁護士の場合、相手方の代理人も同じ地域に事務所を構えていることが多く、少なくともお互いに顔を知っている同業者であるということがあります。
このような場合、いわゆる「なれ合い」が行われるのではないか、という不安が起こるかもしれません。
そのようなことをおそれ、東京や他の地域の弁護士に依頼する方も中にはいるかもしれません。
答えは、そのようなことはありません、という回答になります。
これは私見ですが、むしろ、不適切な業務が行われている場合、地方では、同業者にもそのことが知れ渡りやすく、その後の業務が困難になるのではないかと思います。
そういう意味で、個人的には、都会以上に地方の弁護士の方が適切な業務が行われる側面があるのではないかと考えています(これについては、弁護士により色々な考えがあると思います。)。
離婚訴訟・審判では弁護士に依頼した方がよい
離婚するかしないか調停で決まらない場合には、調停は不成立となります。
離婚を希望する側が、さらに法的手続で決着をはかりたい場合は、訴訟を起こす必要があります。
訴訟いわゆる裁判は、本人だけで行うこともできますが、基本的には弁護士が行うことを想定した制度であるため、本人だけで行うことは負担が大きく困難です。
ですから、この場合は、弁護士に依頼した方がよいといえます。
また、離婚に争いがなくとも、養育費、財産分与、面会交流で争いがある場合、審判により裁判所が決定することになります。
審判は訴訟と似た制度ですが、本人出席が原則とされ、非公開の場で行われるなど、訴訟と異なる部分もあります。
実際、訴訟よりも本人だけで行われるケースが多いようです。
しかし、この場合も、裁判所に主張を行った上で資料を提出し、その主張と資料をもとに裁判所は判断を下すわけですから、弁護士にきちんとした主張と資料の提出を行ってもらった方がよいのは明らかです。
ですから、審判の場合も、弁護士に依頼した方がよいといえます。
弁護士に頼むデメリット
弁護士に依頼するデメリットは何でしょうか。
これはやはりある程度の費用がかかることだと思います。
当事務所では、離婚調停の着手金(契約したときにいただく費用)として最低30万円程度、報酬金(事件終了後にいただく費用)として最低30万円程度いただいております。
離婚事件は、一般に長期化する場合が多く、当事者間の連絡などで代理人の負担が大きいため、ある程度の費用がかかってしまうのはやむを得ないところです。
もっとも、当事務所では、訴訟・審判に移行したときに追加で着手金をいただいていないため、なるべく早い段階からご依頼いただくことをお勧めしております。
(注)遠距離にいても調停に出席ができる電話会議は便利ですが、電話越しで調停委員と話すため、場合により調停委員とのコミュニケーションがしづらくなる欠点があります。
そのため、できる限り直接裁判所に行って調停へ出席した方がいいと思います。
ひのもと法律事務所
輿石逸貴 弁護士(静岡県弁護士会)
令和3年1月にひのもと法律事務所を設立。静岡県東・中部を中心に、不動産、建築、交通事故、離婚、相続、債務整理、刑事事件等、幅広い分野に対応する。
憲法学会に所属し、在野での憲法研究家としての一面も持つ。