仕事で重要なのは「質」か「速さ」か【論語の哲学】
仕事で大事なのは、仕事の結果の良さ、すなわち「質」の高さなのか、あるいは、仕事をする「速さ」なのか。
これは社会人になると、よく議論されるテーマです。
大抵の場合、結局議論は「質」も「速さ」も両方大事だという結論で落ち着きます。
実は、今から2500年以上前に孔子という中国の偉人が、このテーマについて既に結論を出していました。
『論語』には以下の言葉があります。
仕事は「質」が大事
「子曰く、居処は恭に、事を執りて敬に、人を与りて忠なること、夷狄に之くと雖も、棄つべからざるなり」巻第七 子路第十三
(孔子先生は言われた。家にいるときは恭しく、仕事を行うときは慎重にし、人と交際するときは誠実にするということは野蛮な土地に行ったとしても捨てられないことだ)
「君に事えては、其の事を敬して其の食を後にす」巻第八 衛霊公第十五
(主君に仕えるには、仕事を慎重にし、俸禄は後回しにする)
「君子に九思あり。視るには明を思い、聴くには聡を思い、色には温を思い、貌には恭を思い、言には忠を思い、事には敬を思い、疑わしきには問いを思い、忿りには難を思い、得るを見ては義を思う」巻第八 季氏第十六
(君子(立派な人)は9つの思うことがある。見るときにははっきり見たいと思い、聞くときには細かく聞き取りたいと思い、顔つきは穏やかでありたいと思い、姿は恭しくありたいと思い、発言が誠実でありたいと思い、仕事には慎重でありたいと思い、疑わしいことは問おうと思い、怒りには後の面倒を思い、利得を前にしたときは、道義を思う)
仕事をするときは「敬」を思う。つまり、仕事には敬意を持って慎重に行った方がいいという言葉です。
仕事を慎重に行って、質・結果を追求する姿勢が大事だと読み取れます。
他方、孔子先生は次のようにも言っています。
仕事は「速さ」も大事
「事に敏にして言に慎しみ、有道に就きて正す。学を好むと謂うべき」巻第一 学而第一
(仕事を機敏にして発言を慎重にし、徳の高い人について自分の身を正す人は、学を好んでいるといえる)
「敏なれば則ち功あり」巻第九 陽貨第十七、巻第十 尭曰第二十
(機敏であれば仕事の結果が出る)
仕事は「敏」にしなさい。つまり、仕事は機敏に行えば、結果がでるでしょうという意味です。
さらに孔子は、次のようにも言っています。
「子路、諾を宿むること無し」巻第六 顔淵第十二
(子路(孔子の弟子)は引き受けたことをグズグズすることがなかった)
「事を先きにして得ることを後にするは、徳を崇くするに非ずや」巻第六 顔淵第十二
(仕事を先にして利益を後にすることが、徳を高めることじゃないだろうか)
「三たび思いて而る後に行う。子、これを聞きて曰く、再びせば斯れ可なり」巻第三 公冶長第五
(三回考えてから実行する人がいたが、孔子先生はこれを聞くと、2回でいいよと言った)
仕事自体のスピードだけでなく、仕事はすぐにとりかかった方がいいという意味にも読み取れます。
『論語』には、現代の日本人でも勉強になる知恵がつまっています。
ひのもと法律事務所
輿石逸貴 弁護士(静岡県弁護士会)
令和3年1月にひのもと法律事務所を設立。静岡県東・中部を中心に、不動産、建築、交通事故、離婚、相続、債務整理、刑事事件等、幅広い分野に対応する。
憲法学会に所属し、在野での憲法研究家としての一面も持つ。
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