大学の学部試験や司法試験の答案で、規範として判例の要約を書いた上で文末に「(判例同旨)」と書いた方が良いのでしょうか。

この点、判例を理解していることを示すため、あえて「(判例同旨)」と書いた方が良いと言っている人もいます。

しかし、以下の点から判例同旨と書くことはお勧めしません

判例同旨と書いているのに判例の理解が誤っている

まず、よく言われるのが「(判例同旨)」と書いておきながら、書いている内容が判例の要旨になっていないという場合がありえるということです。

判例同旨と書いていなければ、筆者の独自説と言い張ることもできますが、判例同旨と書いてしまうと判例の理解が不十分であることを自ら示すことになってしまいます。

権威主義的

大学教授等には、判例同旨と書くことをことさらに嫌う方もいるようです。

自分で論理を考えず、判例という権威に安易にすり寄ることに嫌悪感を持たれるようです。

わざわざ判例同旨と書く必要がない

判例同旨と書かない方が良い大きな理由は、判例の要約が書いてありさえすれば、あえて判例同旨と書かなくても判例を理解することは十分に示せるということです。

判例同旨と書かなければ判例であることが理解できないような採点者は、専門家であればまずいないでしょう。

実務で判例同旨と書くことはない

また、個人的に判例同旨と書いてはいけない理由としてあげたいのが、次の点です。

実務でも主張書面などに判例を引用して自らの主張の根拠にするということはよくあります。

しかし、この場合「(判例同旨)」とわざわざ書くようなことはしません。

一般的な弁護士業界から見ても、「(判例同旨)」と書いている人はほとんど見かけたことがありません。

これは裁判官からすれば判例同旨など書かなくても判例の要約書いてあれば判例に基づいて主張していることは十分理解できることですし、むしろ、わざわざ判例同旨だと書くことは余計なお世話だと思われて悪印象を持たれる可能性すらあります。

どうしても判例が根拠であることをアピールしたいときは、判例の全文などを印刷して、証拠で提出するということはあります。

しかし、有名判例であれば、わざわざこのようなことをする必要はないというべきです。

判例同旨という書き方は実務でもほとんど使われておらず、したがって答案でも書くべきではないと考えます。

ひのもと法律事務所
輿石逸貴 弁護士(静岡県弁護士会)


令和3年1月にひのもと法律事務所を設立。静岡県東・中部を中心に、不動産、建築、交通事故、離婚、相続、債務整理、刑事事件等、幅広い分野に対応する。 憲法学会に所属し、在野での憲法研究家としての一面も持つ。